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素人園芸解説 -私はこう育てる-

クリスマスローズ

イメージ

原産地

ヨーロッパ中部~南部・ロシア・コーカサス・西アジア・中国

キンポウゲ科

高さ

10~120cm(種類による)

花期

12~5月(種類による)

形態

多年草または宿根草(夏休眠)

別名等

ヘレボラス/ヘレボルス(いずれも属名)/テイコンソウ/嚔根草/カンシャクヤク/寒芍薬


(※各種の和名・異名はページの一番下にまとめた)

日照

戸外で0~30%遮光(7月上旬~9月上旬は50%遮光)。
越冬中は直射日光に当てる。

【補足】耐陰性が強いが、日光に当てたほうがよく育つ。

水やり

土の表面が乾けば与える。

【補足】乾燥を嫌うが、高温期の過湿は命取りになる。フェチダスは雨に当てないほうがよい。

肥料

3月、10月、12月に、固形肥料の置き肥、加えて、10~5月に、週に一度、2000倍に薄めた液肥を施す。

【補足】一貫して窒素(N)を控えめに。

植え替え

2月上旬~4月上旬か、9月下旬~12月上旬(秋に行う場合は、なるべく10月中に済ませる)。

【補足】苗は毎年、成株は2年に一度行う。交配の進んだ品種ほど根詰まりしやすい。深植えすると腐って枯れることがあるため、やや浅植えとする。

整姿

夏場は株元をマルチングし、地温の上昇から守る。枯れた下葉は病気の原因になるため、まめに取り除く。花後、ガクが傷んできたら取り除く(花茎は切らずに残し、4月頃、完全に枯れたら切る)。
無茎種のみ、古い葉が茂りすぎて見苦しければ、12月に切り取る(有茎種は必要ない)。フォエチドゥスは、花が盛りを過ぎる前に摘み取り、消耗を防がないと、花後に枯死しやすい(タネを取る場合は残す)。

繁殖

【株分け】9月下旬~11月下旬。(なるべく10月までに済ませる。あまり細かく分けると、その後の生育が悪くなる。有茎種の株分けは難しい。)

【タネまき】採ってすぐにまくか、乾かないよう保存して9~10月にまく。(秋まきしたほうがよい。発芽は翌年の早春なので、水やりしながら気長に待つ。)

耐暑性

やや弱く、真夏は休眠する。

【落葉性種】地上部が無くても、水やりを忘れない。

耐寒性

強い(-10~-25℃)が、極寒地では室内が安全。

【アーグティフォリウス、リビドゥス】やや弱く(-5℃)、寒地では室内が無難。


【補足】土を強く凍らせないよう注意。高温にあわせない。

解説

  1. 「クリスマスローズ」という名は、本来、原種のニゲルを指す英名である。しかし日本では、この仲間全体の総称として用いるのが普通。なお、ニゲル以外の種類は、クリスマスの時期には開花しない。(詳しくは下記。)
  2. この仲間は、茎が立ち上がり、草丈が高くなる「有茎種(木立性種)」と、根元から直接多くの葉を伸ばし、草丈の低い「無茎種」に分かれる。無茎種は落葉性の種類が多く、開花時に葉が無かったりする。
  3. 落葉性種の落葉期は、種類によって異なる。初夏に枯れるもの、初秋に枯れるもの、寒くなってから中途半端に枯れるもの、とさまざま。
  4. 無茎種と有茎種(木立性種)の代表的な原種は、下記のようなものがある。なお、クリスマスローズの植物学的な分類は、いまだ不確定要素がある。
    • 無茎種。
      • アトロルーベンス…スロベニア・クロアチア原産。花色は、黄緑色や暗赤紫色、赤みがかった緑色など変化に富む。落葉性。比較的栽培容易。
      • アブルジクス…イタリア中央部原産。ボッコネイの変種とされてきたが独立した。黄緑色の花。葉が細かく裂ける。落葉性。
      • オキシデンタリス…ヨーロッパ北西部原産。ビリディスの亜種とされてきたが独立した。緑色の花。落葉性。比較的育てやすい。
      • オドルス…ヨーロッパ中部~東ヨーロッパ原産。淡緑色の花。個体によって、花にさまざまな匂いがある。常緑性。栽培容易。
      • オリエンタリス…黒海沿岸地域原産。花色・花型ともに変異が多い。無茎種の代表格。亜種にアブカシクス、グッタツス、コーカシクスがある。栽培容易。
      • クロアティクス…クロアチア原産。アトロルーベンスの亜種とされてきたが独立した。アトロルーベンスによく似て、やや小型。落葉性。比較的栽培容易。
      • シクロフィルス…ギリシャ~マケドニア原産。緑~黄緑色の花。個体によっては、花に匂いがある。落葉性。栽培容易。
      • チベタヌス(シネンシス)…中国中部原産。白~桃色または淡紅色の花。落葉性とされ、夏に葉が枯れることが多い。寿命は短め。高温・乾燥を極度に嫌い、生長も遅く、栽培難易度高。
      • デュメトルム…ヨーロッパ中部~東ヨーロッパ原産。2cmくらいの小さな緑色の花で、草丈は30cm程度と低い。落葉性。比較的栽培容易。
      • トルクァツス…ボスニア・ヘルツェゴビナ~モンテネグロ原産。花色は緑~赤紫色と変異が多い。落葉性。耐暑性に欠けるが、栽培が難しいわけではない。変種として、ヘルツェゴビヌスやモンテネグロがある。
      • ビリディス…イタリア、フランス、スイス原産。緑色の花。落葉性。栽培容易。
      • プルプラッセンス…東ヨーロッパ原産。紫がかった灰緑色~赤紫色の花。草丈が低い。落葉性。栽培容易。
      • ボッコネイ…イタリア~シチリア島原産。ムルチフィダスの亜種とされてきたが独立した。葉が細かく裂け、鋸歯(ギザギザ)が入る。花は淡黄緑色で開ききらず、抱え咲きになる。花に芳香を持つ個体もある。比較的育てやすい。
      • ムルチフィダス…ヨーロッパ中部~東ヨーロッパ原産。黄緑色の花。葉が細かく裂ける。亜種にイストリアクス、ヘルツェゴビナス、ムルチフィダスがある。いずれも落葉性。比較的栽培容易。
      • リグリクス…イタリア原産。ボッコネイの変種とされてきたが独立した。淡い黄緑色の花で、匂いがある。栽培容易。
    • 有茎種。
      • アーグティフォリウス(コルシクス)…フランスのコルシカ島、イタリアのサルデーニャ島原産。草丈1m前後の大型種。葉が大きく三つに裂けており、粗い鋸歯(ギザギザ)がある。淡緑色の花。耐暑性はあるが、やや寒さに弱い。栽培容易。
      • フォエチドゥス…ヨーロッパ西部原産。草丈1m近くに育つ大型種。葉が深く切れ込む。淡黄緑色の花。傷を付けると悪臭がする。寿命が短く、数年で枯れる。比較的栽培容易だが、根がデリケート。
      • ベシカリウス…トルコ、シリア原産。くすんだ赤色をした筒状の特異な花を咲かせ、その後、風船のように膨らんだ、大きなサヤを付ける。落葉性で、初夏から休眠する。生長が遅く、栽培難易度高め。
      • リビドゥス…スペインのマジョルカ島原産。淡黄緑または淡紅紫色の花。有茎種だが草丈は低い。やや寒さに弱い。寿命が短く、数年で枯れる。栽培容易。
      • ニゲル…ヨーロッパ中部~東ヨーロッパ原産。白~桃色、または淡黄緑色の花。有茎種と無茎種の中間的な姿・性質を持つ。草丈は低く、葉がやや多肉質となる。生長が早い。栽培難易度はやや高めだが、個体差があり、育てやすいものもある。
  5. 人気が上昇するにつれて、種間交雑種も増えている。例を挙げると、下記のようなものがある。いずれも、原種そのものより丈夫。タネができない不稔性の種類が結構多い。これらは、主に実生で作られるため変異が大きく、個体によって、両親の片方だけに似ていたり、両方に似ていたりする。
    • ステルニー…アーグティフォリウス×リビドゥス
    • エリックスミシー…ニゲル×ステルニー
    • ニゲルコルス…ニゲル×アーグティフォリウス
    • バラーディアエ…ニゲル×リビドゥス
    • 「スノーホワイト」…ニゲル×オリエンタリス系交配種
    • ベルチェリ「ピンクアイス」…ニゲル×チベタヌス
    • アッシュウッデンシス「ブライアーローズ」…ニゲル×ベシカリウス
    • 「ミステリー」…フォエチドゥス×アーグティフォリウス
  6. 普通、「クリスマスローズ」の名前で売られているのは、オリエンタリス系の交配種が多い。キリスト教のレント(四旬節)の頃に開花するというので、「レンテンローズ」とも呼ばれる。日本では2~3月に開花する。丈夫で栽培容易。なお、この交配品種群には、「ヒブリドゥス」の学名が与えられている。
  7. 交配種の花色は、紅、赤、桃、白、黄、緑、紫、黒紫、グレー、クリーム、アプリコットなど、とても豊富。花の模様もいろいろで、下記のようなものがある。
    • アイ…中心部の蜜腺を取り巻くように、リング状の斑点模様が入る。
    • スポット…花弁の全体または一部に、小さな斑点模様が多数入る。斑点の現れ方はさまざま。
    • ダークネクタリー…花の中心を取り巻く蜜線(ネクタリー)が濃色になっている。
    • ネット…スポットとベインが同時に現れ、網目状に見える。
    • ノンスポット…花弁にも蜜腺にも全く模様が入らない。完全な無地花は珍しい。
    • バイカラー…二色咲き。花弁ごとに色が分かれるものと、一枚の花弁に二色現れるものがある。
    • ピコティー…花弁の縁だけが違う色になる。
    • フラッシュ…花の中心部に、放射状に、大きめの斑点が入る。ブロッチほど大きな模様ではない。
    • ブロッチ…花弁の中心部または中央に、非常に大きな斑点が入る。
    • ベイン…花弁の脈に沿って、筋状の模様が入る。
    • ミスト…花弁の広範囲に、霧を吹きかけたような微細な斑点模様が多数入る。
    • リバーシブル…二色咲き。花弁の裏と表が違う色になる。
  8. 花型は、「一重咲き(シングル)」「半八重咲き(セミダブル)」「八重咲き(ダブル)」などがある。セミダブルは、アネモネ咲き、唐子咲きともいう。
  9. よく見ると、一株一株、花弁(正確にはガク片)の形状にも変化がある。先端が丸みを帯びた「丸弁」、先端が尖る「剣弁」などが見られる。花弁同士の重なり具合も、株によって違う。
  10. 花の咲き方は、花弁がほぼ平開する「平咲き」、やや内側に抱え込むように咲く「カップ咲き」、花弁が開ききらず筒状になる「筒咲き」などがある。また、株によって、下向きにうつむいて咲いたり、やや上を向いて咲いたり、といった個性もある。
  11. この仲間はキンポウゲ科植物なので、本来の花弁は退化し、蜜線(ネクタリー)となっている。花弁のように見える美しい部分は、ガク片である。半八重咲きや八重咲きの花に見られるたくさんの花弁は、蜜線が花弁化したもの。なお、半八重咲き(セミダブル)にみられる、蜜腺が変化した小花弁は、早くに散ってしまう。
  12. 可憐な八重咲きの花が人気の「パーティードレス系」と呼ばれる品種群は、やや気難しく、夏に枯れやすい。鉢植え向き。
  13. クリスマスの時期に咲く、本来の意味での「クリスマスローズ」は、原種のニゲルと、その園芸品種だけである。花は白~淡桃色、淡黄緑色などで地味だが、清楚で好まれる。八重咲き種もある。やや高山性・森林性で、高温多湿や強光に弱い反面、寒さには非常に強い。
  14. ただ、ニゲルがクリスマスに開花するのは、ヨーロッパでの話らしい。気候の違う日本では、もう少し開花が遅く、年明けになる。
  15. 有茎種のうち、アーグティフォリウス、フォエチドゥス、リビドゥスは、1~3月頃に花を咲かせ、その後、開花した茎を枯らす性質がある。花が終わりかけたら、早めに花茎を切り取る。
  16. また、フォエチドゥスは暑さに弱いうえに短命(長くて3~4年)なので、花茎とともに株全体が枯れることが少なくない。従って、2~3年をめどにタネを採り、株を更新したほうがよい。なお、アーグティフォリウスやリビドゥスも、せいぜい5~6年と、こちらもやや短命。
  17. 有茎種は、総じて性質がデリケートで、短命な傾向がある。一つの株と長く付き合うなら、無茎種で、かつ、交配の進んだ品種を選びたい。

注意点・病害虫

  1. 実生で増殖されることが結構多く、一株一株、微妙に個性が違う。よく似た花であっても、花弁の形や開き方、花の向きなどに違いがある。ただ、近年は、メリクロン(生長点培養)技術によって大量増殖された株が安価に出回るようになった。メリクロン苗は、親株の形質をそっくり受け継ぎ、品質が揃っている。
  2. 安く出回る3号ポット苗は、とても小さく、購入後1~3年は育てないと花が見られない。すぐに花が見たければ、開花株か、5号以上の大きなポットに植わっている株を購入する。値段が張るが仕方がない。
  3. ほとんど種類が、夏の高温多湿を嫌う。性質上、強い乾燥も嫌うが、土の水持ちがよすぎると過湿になり、夏に腐る原因になるので、水はけを重視した土に植えることが大切。硬質赤玉土や硬質鹿沼土、軽石、珪酸塩白土、パーライトなどを多めに使った、やや粒の粗い土が望ましい。クリスマスローズ専用土が売られているので、それを使うと楽ができる。できれば、真夏は土の表面をマルチングし、地温の上昇や乾燥から守りたい。
  4. 山野草用の土でもよく育つ。原種のニゲルは、昔から洋種山野草として扱われてきた。この仲間は、いちおう石灰質を好むが、土の酸度には、それほど強くこだわらない。
  5. 黒・紫・灰色系の花を咲かせる品種は、他の花色の品種より、高温多湿に弱い傾向がある。
  6. タネからでも容易に殖やせる。初夏に熟したタネを、乾かないよう、土に埋めるなどして保存し、秋にまけば、翌春までに発芽する。うまくいけば、無茎種なら1~2年、有茎種でも3~4年ほどで開花する。タネから育てると、株によってさまざまな花色が出現するので、自分好みの新品種を作ることも可能。なお、種間交雑種は、タネのできないものが少なくない。
  7. ウイルス病にかかりやすいので、葉に、淡いモザイク模様や萎縮・奇形、黒いシミなどが出ている株は購入しない。(斑入り葉の品種は除く。)クリスマスローズの栽培でよく問題になる「ブラックデス」は、進行とともに黒いシミが株全体に広がっていく致命的な病気だが、ウイルスが原因と考えられている。その他、炭疽病や立枯病、軟腐病、べと病などにもかかる。
  8. 害虫は、アブラムシ、スリップス、ハダニ、ハマキムシ、ハモグリバエ、ナメクジ、ヨトウムシなどに注意。特にアブラムシはさまざまなウイルスを媒介するので、優先的に防除する。
  9. 有毒植物である。種類によっては、命にかかわる強い毒を持つ。致死性でなくとも、汁液に触れると炎症を起こすこともある。手入れの際は手袋をする習慣を付けたい。

余談

  1. 切り花にできるが、水あげが今ひとつよくない。

各種の和名・異名

  1. レンテンローズ/春咲きクリスマスローズ(オリエンタリス)
  2. コルシカス/コルシクス/リビドゥス亜種コルシクス(いずれも異名)/アーグチフォリウス/コルシカンヘレボルス(いずれもアーグティフォリウス)
  3. シネンシス(異名)/チベタナス(いずれもチベタヌス)
  4. ニガー/ノイガー/クリスマスローズ/ブラックヘレボルス(いずれもニゲル)
  5. レンテンローズ/ガーデンハイブリッド/オリエンタリスハイブリッド/春咲きクリスマスローズ(いずれもヒブリドゥス)(※オリエンタリス系の交雑種)
  6. フェチダス/フォエチドゥス/フェチドゥス/木立ちクリスマスローズ/スティンキングヘレボルス/スティンクワート/セッターワート/ダングワート/ベアーズフット(いずれもフォエチダス)

(※データ:大阪市基準)