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素人園芸解説 -私はこう育てる-

プリムラ

イメージ

原産地

日本(沖縄除く)・朝鮮半島・中国・シベリア東部・チベット~ヒマラヤ・ヨーロッパ・コーカサス

サクラソウ科

高さ

5~60cm(種類による)

花期

12~5月(種類による)

形態

多年草または一~二年草

別名等

セイヨウサクラソウ/西洋桜草/プリムローズ


(※各種の和名・異名はページの一番下にまとめた)

日照

西日を避けた戸外の直射日光下。(7月上旬~9月上旬は50%遮光する。越冬中は霜除けする。)

【補足】オブコニカは耐陰性があり、多少の日陰なら耐える。

水やり

土の表面が乾けば与える(乾燥に弱いが、極端な過湿も嫌う)。

【補足】花や葉に水をかけると病気になりやすい。できれば雨に当てない。(特に、茎葉にファリナ(白い粉)を持つ種類は雨に弱い。)

肥料

10月上旬~6月上旬に、10~14日に一度の液肥、または固形肥料の置き肥。

【補足】原種や、それに近い品種ほど、少なめの施肥を心がける。

植え替え

花後すぐ~6月中旬か、9月中旬~10月下旬。

【補足】深植えは禁物。耐暑性の弱い種類は、花後すぐに植え替えると夏越し成功率が高まる。

整姿

枯れた下葉や花がらは、まめに取り除く。

繁殖

【株分け】植え替えと同時期(秋に行ったほうがよい)。

【タネまき】4月上旬~6月中旬か、9月中旬~10月下旬(好光性のため、覆土は薄く)。

耐暑性

とても弱い。

耐寒性

わりと強い(-5℃)が、寒地では室内へ。

【オブコニカ、マラコイデス】最低3℃を保つ。

【補足】いずれも、高温にあわせない。

解説

  1. 「プリムラ」という名は、この仲間の属名である。とても種類が多く、性質もさまざまだが、ここでは、園芸店でよく見かける、オブコニカ、ジュリアン、ポリアンサ、マラコイデスの四種類が対象である。(他の洋種プリムラ類については、下のほうで簡単に触れた。)なお、日本にも、日本サクラソウやクリンソウの仲間が自生するが、趣味の山野草として独自の地位を築いている植物なので、別ページに分けた。
  2. オブコニカは中国西部~ヒマラヤ原産で、やや大型の種類。花茎が伸び上がり、先端に大きな花をたくさん咲かせる。花色は、白~桃~紅、朱赤、淡紫~青紫など。寒さに弱い。
  3. マラコイデスは、中国の雲南省と四川省の原産。花茎が長く伸び上がり、優しげな小花を段状にたくさん咲かせる。耐暑性・耐寒性ともに弱いが、「うぐいす」系品種や、「耐寒性マラコイデス」と付いているものは、比較的耐寒性があり、0℃前後まで耐える。
  4. ポリアンサは、複数のヨーロッパ原産種(エラチオール、ブルガリス、ベリス)から作られた人工交配種で、最も一般的なプリムラである。花が大きく、花色はきわめて豊富。最近は、バラのような豪華な花を咲かせる八重咲きの園芸品種群「ダブルプリムローズ」も見かける。比較的寒さに強い。
  5. ジュリアンは、ポリアンサと、コーカサス原産のプリムラ・ジュリアエとの交雑種から作られた。ポリアンサを一回り小さくしたような姿で、性質も似ているが、ポリアンサより丈夫で、寒さに強い。
  6. 最近は、葉裏が紅色のシネンシス(プラエニテンス)や、その近縁種で、茎葉が銀色を帯びた「雲南サクラソウ」も見かける。いずれも、名前からわかるように中国原産である。(シネンシスが四川省、雲南サクラソウが陜西省。)また、両者の交配種「サーティーワン」も出回る。いずれも育て方はマラコイデスに準じるが、比較的耐寒性が強く、0℃前後で越冬する。こぼれダネでも殖える。シネンシスは耐暑性があり、うまくいけば暖地でも夏越しできる。

その他の洋種プリムラについて

  1. その他の洋種プリムラには、アリオニー、エラチオール、オーリキュラ、カピタタ、キューエンシス、ジュリアエ、デンティクラタ、ビアリー、ビーシアナ、ヒルスタ、ブルガリス、ベリス、ヘロドクサ、マルギナタ、ラティフォリア、ロゼアなどがある。いずれも耐暑性が弱いが、耐寒性はとても強く(-30℃)、寒地向き。これらの施肥は少なめでよく、花後すぐ~6月上旬に、月に1~2回液肥を与えれば足りる。
  2. デンティクラタも中国・ヒマラヤ原産。一応、夏越し可能だが、タネがよく採れるので、一年草扱いも可能。カピタタやビアリー、ビーシアナ、ヘロドクサも同地域の原産。ロゼアは、アフガニスタン~カシミール原産で、鮮やかなローズピンクの花がとても美しい。
  3. アルプス・ピレネー原産のエラチオール、オーリキュラ、ベリスは、いずれも黄色系の花を咲かせる。このうち、ベリスは「カウスリップ」とも呼ばれ、古くからハーブとして知られる。濃桃色花を咲かせるラティフォリアや、紅紫色花のヒルスタも、同地域の原産。
  4. ブルガリスは、ヨーロッパでは、春を告げる花として、古くから親しまれている黄花種である。キューエンシスは、イギリスの王立キュー植物園で生まれたもので、フロリバンダと、バーティシラタ(またはシネンシス)の自然交雑種である。これも花色は黄色だが、やや寒さに弱い。
  5. ジュリアエは、上記のジュリアンの片親であるため、草姿が似ている。比較的暑さに強く、育てやすい。
  6. アリオニーは、ヨーロッパの亜高山に生える、ごく小型の種類で、園芸品種が多い。マルギナタは、白っぽい葉と淡紫色の花が特徴。アルプス原産のプリムラとしては、かなり育てやすい部類に入る。こちらも園芸品種が多い。
  7. 最近人気の「オーリキュラ」は、原種のオーリキュラそのものではなく、別の原種ヒルスタを交配して作出された「プリムラ・プベッセンス」と総称される交配品種群である。古くからイギリスで品種改良が進んでおり、大きく分けて三つの系統がある。(ここからまた、さらに細かく分類されている模様。)
    • アルパイン・オーリキュラ…ファリナ(葉や花に付いている白い粉)を持たない。花の中心部と花弁の色が異なり、花の中心部は白~黄色になる。名前から分かるように高山性。
    • ボーダー・オーリキュラ…原種オーリキュラに近い、性質の強い系統。ファリナの有無や花色はさまざま。
    • ショー・オーリキュラ…茎葉・花弁までファリナで覆われる。花弁の色は緑~灰~白色と地味。
    オーリキュラは、西洋種のプリムラとしては最も華やかで、花色が豊富。ビビッドな複色咲きになる品種が多い。原種オーリキュラの影響で葉が多肉質なので、乾燥に強い反面、過湿に弱い。暖地では夏越しが問題となるが、山野草扱いすれば、比較的育てやすい。

注意点・病害虫

  1. 草丈の低いジュリアンやポリアンサは、葉の中心に花がかたまって咲く「アコーリス咲き」が一般的である。が、気温が上がるにつれ、次第に花茎が伸び上がり、オブコニカと同じような形になる。
  2. いずれの種類も、寒地以外では夏越しが難しいため、夏~秋まきの一年草として扱うのが普通である。
  3. この仲間は、「雌しべが長く雄しべが短い花(長花柱花、またはピン花)の咲く株」と、「雄しべが長く雌しべが短い花(短花柱花、またはブラシ花)の咲く株」の二系統が存在する。交配するときは、花型をよく見て、異なる型同士をかけあわせると、よく結実する。このような性質を「異形花不和合性」という。(プリムラの仲間は、基本的に異形花不和合性だが、長花柱花同士の交配なら、ときどき結実するらしい。)
  4. タネの寿命が比較的短いので、古いタネを買ってしまわないよう注意。
  5. ほとんどの外国産原種は暑さに弱いが、山野草専用土など、やや粒の粗い用土に植え、夏の日差しと雨を避ければ、暖地でも夏越しできることがある。抗火石鉢か断熱鉢に植えるのもよい方法である。(もっとも、失敗することが多いので、無理はしない。)
  6. この仲間は、中性~弱酸性の土を好む。
  7. アブラムシ、ヨトウムシ、ナメクジなどが付きやすい。また、花がらや枯れた下葉を放置すると、灰色かび病が出る。ウイルス病にかかると、葉に黄緑色のモザイク模様ができる。治療法はないので処分する。
  8. プリムラの仲間は、茎葉の細かい毛に、「桜草皮膚炎」を起こさせる抗原物質「プリミン」を含むものがある。最も含有量が多いのはオブコニカで、被害も多発している。肌の過敏な人は、プリムラの仲間に直接触れてはいけない。ただし、オブコニカの園芸品種「タッチミー」「リブレ」などは、プリミンの含有量が少なく、過敏な人以外は心配ない。なお、日本サクラソウは安全性が高く、めったに皮膚炎を起こさないらしい。

各種の和名・異名

  1. アルピコラ変種ルナ(アルピコラ変種アルピコラの異名)
  2. セイタカセイヨウサクラソウ/オックスリップ(いずれもエラチオール)
  3. オーリクラ/アツバサクラソウ/厚葉桜草(いずれもオーリキュラ)
  4. トキワザクラ/常磐桜/トキワコザクラ/常磐小桜/シキザキサクラソウ/四季咲桜草/ジャーマンプリムローズ/ポイズンプリムローズ(いずれもオブコニカ)
  5. ヤグラサクラソウ/櫓桜草(キューエンシス)
  6. カンザクラ/寒桜(シネンシス)
  7. ユキザクラ/雪桜(シネンシス変種ステラタ)
  8. ジュリエ/ジュリアン(いずれもジュリアエ)
  9. デンティキュラタ/タマザキサクラソウ/玉咲桜草/ドラムスティックプリムラ(いずれもデンティクラタ)
  10. エッジワーシー(ナナの異名)
  11. ホザキサクラソウ/穂咲桜草(ビアリー)
  12. ルブラ(ヒルスタの異名)
  13. バーズアイプリムローズ(ファリノサ)
  14. 雲南桜草/ホウシュンカ/アンシャンスイ(いずれもフィルクネラエ)
  15. シネンシス(異名)/カンザクラ/寒桜/フユザクラ/冬桜/チュウカサクラ/中華桜/チュウカサクラソウ/中華桜草/チュウカコザクラ/中華小桜(いずれもプラエニテンス)
  16. ヌタンス(フラクシダの異名)
  17. アコーリス(異名)/イチゲサクラソウ/一華桜草/プリムローズ(いずれもブルガリス)
  18. ヘロドクサ(異名)/キバナクリンソウ/キバナノクリンソウ/黄花九輪草(いずれもプロリフェラ)
  19. ジャイアントカウスリップ(フロリンダエ)
  20. キバナクリンソウ/キバナノクリンソウ/黄花九輪草/キバナクリンザクラ/黄花九輪桜/カウスリップ(いずれもベリス)
  21. ポリアンタ/ポリアンサス/ポリアンツス/クリンサクラソウ/九輪桜草(いずれもポリアンサ)
  22. ダブルプリムローズ(ポリアンサ系八重咲き品種)
  23. マラコ/メラコ/メラコイデス/ケショウザクラ/化粧桜/オトメザクラ/乙女桜/オトメコザクラ/乙女小桜/フェアリープリムローズ/ベビープリムローズ(いずれもマラコイデス)
  24. チオナンサ亜種メラノプス(メラノプスの異名)
  25. ビスコサ(ラティフォリア)
  26. ウスベニコザクラ/ヒマラヤコザクラ/ヒマラヤサクラソウ(いずれもロゼア)

(※データ:大阪市基準)