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素人園芸解説 -私はこう育てる-

リカステ(低地性種)

イメージ

原産地

ブラジル・メキシコ・エクアドル・エルサルバドル・グァテマラ・ペルー・ボリビア・ホンデュラス・キューバ・西インド諸島

ラン科

高さ

20~80cm

花期

2~6月

形態

多年草、着生または半地生、複茎性

別名等

ライカステ


スキンネリ(バージナリスの異名)

日照

4月中旬~11月上旬の生育期は、戸外で20~30%遮光(7月上旬~9月上旬は50%遮光)。
越冬中は、室内の日当たり。

水やり

生育期は、用土の表面が乾けば与える。越冬中は、月に一~二度か、ほぼ断水する。

【補足】葉が大きいので、生育期間中は水切れに注意し、空中湿度も高めに保つ。水やりが多いと、バルブにヒビが入ることがある。
越冬中に、花芽か新芽が伸びてきたら、控えめに水やりを続ける。花に水をかけるとシミができる。

肥料

4月中旬~7月上旬と、9月上旬~10月中旬に、7~10日に一度、1500~2000倍の液肥、加えて、5~6月に、固形肥料の置き肥。

【補足】8月以降は、窒素(N)を含まない肥料に切り替える。

植え替え

4月上旬~5月上旬。

【補足】2~3年に一度行う。腐った根は取り、生きた根は切らない。

整姿

落葉性の種類は、葉の落ちたバルブの先端にトゲが残って危ないので、消毒した刃物で切り取っておく。
葉のない古いバルブ(葉の下の膨らんだ部分)は、茶色くなったり、しなびていれば切る。花が終わったら、花茎を根元から切る。

繁殖

【株分け】植え替えと同時期。

耐暑性

わりと強いが、できる限り涼しく過ごさせる。

耐寒性

最低10℃を保つ。

解説

  1. リカステの仲間は、大きく分けて、比較的標高の低い地域に自生し、耐暑性がある「低地性種」と、標高の高い岩場などに自生し、耐暑性が無い「高地性種」がある。ここで取り上げているのは、暖地でも比較的栽培しやすい、低地性種のほうである。
  2. 低地性のリカステは、晩秋にバルブが完成すると落葉する種類が多い。落葉後は、花芽か新芽が出てくるまで、ほとんど水やりの必要がない。開花期は主に、落葉中の冬~春の間である。なお、一部、ほぼ常緑の種類もある。
  3. 低地性種の代表種は、原種のアロマティカとクルエンタである。いずれも、アメ細工のような、濃黄色~黄緑色の花を咲かせる。花は小さめだが多花性で、シナモンに似た独特な香りがある。
  4. 高地性のリカステは、低地性種ほど明確な落葉期を持たず、ほぼ常緑に近い。開花期は、種類によってまちまち。耐暑性だけでなく、耐寒性も低地性種に劣るので、冬は、最低10℃を切らないようにする。
  5. 高地性種の代表格は、何といっても、原種のスキンネリ(バージナリス)である。スキンネリの基本種はエクアドル、白花変種のほうはグァテマラの国花になっている。園芸品種が多く、花色が豊富で、花自体も大きく華やかである。なお、スキンネリ系の園芸品種は、原種に近いものより、改良が進んだ品種のほうが、暑さに強い。
  6. 高地性種は、朝夕の気温差が大きく、濃い霧に覆われる、熱帯雲霧林に自生している。そのため、日本での栽培も、夏の間、夜間の最高気温が20℃を上回らないのが理想。同時に、高い空中湿度も必要とする。高冷地ならともかく、暖地では、冷房設備がない限り、まず無理。
  7. ただし、最近は、強健な低地性種などを交配親に用いた、耐暑性の強い交配種が増えているので、暖地でも栽培できるようになりつつある。
  8. 高地性のリカステと近縁属のランとの属間交配も進んでいる。リカステとアングロアとの属間交配種(人工属)は「アングロカステ」と呼ばれる。アングロカステは、高地性リカステよりは若干暑さに耐えるが、そもそもアングロアが高地性の洋蘭なので、その血を引くアングロカステも、耐暑性が強いとはいえない。
  9. なお、アングロアは別名「ユリカゴラン(クレイドル・オーキッド)」「チューリップラン(チューリップ・オーキッド)」などと呼ばれる通り、花弁が開ききらず、花全体がカップ型になる。その影響で、アングロカステも、花弁が半開きになりやすい。
  10. 少し前の、ラン科植物の属名変更の余波を受け、リカステの仲間のうち、緑色の花を咲かせる常緑性種が、イダ属に分離された。該当する種類は、シンナバリナ、フィンブリアタ、ロクスタなど。これらも暑さに弱い。そして、その後、イダ属は「スダメリカステ(スダメルリカステ)属」に名称変更された。

注意点・病害虫

  1. 低地性種のリカステは、晩秋にバルブが完成すると、役目を終えた葉が枯れ落ちるが、葉が落ちたバルブの先端に鋭いトゲ(葉柄痕)があるので、扱いに注意する。できれば、消毒済みのハサミで切り取っておく。
  2. リカステの仲間は、葉が非常に大きいため、鉢が不安定になりやすく、少しの風でも倒れてしまうことがよくある。二重鉢にするなどして工夫する。
  3. ハダニが付きやすいので、水やりの際に、葉の裏にも水をかけて洗い流す。

属間交配種(人工属)

  1. アングロカステ…アングロア×リカステ

(※データ:大阪市基準)